穴問題再び。


 うわ、もっと仕事しようと思ったのに、事務所片付けモードに入ったら、全然終わらない! 事務所に山と積まれた本を整理しようと思ったんだけど、あまりに終わらないので会議室に広げっぱなしで休憩中っす。ぷはあ。ちょっと小腹空いたね。今日は渋谷[VIRON]のフーガス(オリーブ入り)をゲットしたので、それ食べよ。うまいよ、フーガス。でも、あんまり食べるともうすぐ行かなくちゃいけない宴席で食べられなくなりますよ。今夜は、故ナンシー関さんを追悼しながら飲み食いする会(正式名称不明)です。
代替文
 台湾料理に集う壮絶なメンバー(この会はマジに濃いっす)。でも、フーガスもうまい。

ナンシー関の「小耳にはさもう」ファイナル・カット (朝日文庫 な 14-8) ザ・ベリー・ベスト・オブ「ナンシー関の小耳にはさもう」100 (朝日文庫) 信仰の現場―すっとこどっこいにヨロシク (角川文庫) テレビの鬼 聞く猿 (朝日文庫) 耳部長 (朝日文庫) ナンシー関 大コラム


ついでにここのところ食べたもの備忘録。渋谷[おくむら]でざる蕎麦(微妙だったな)。代官山[蟻月HANARE]にてもつ鍋(うまかった!)。渋谷[トゥッカーノ]でシュラスコ(うまかったけど肉食い過ぎた)。渋谷[有昌]でしいたけソバ(常にうまい)。とまあ、渋谷から出てませんな、ここのとこ。


 しかし、本が無限大にあるな。これは本の万里の長城やあ。しかも全然「タメになってない」っての。ワタシが物持ちがいいっていう話は、これまでにもあちこちでしてますが、そんなボクが嫌いになってきた(苦笑)。捨てたい、捨てましょう、捨ててやる、よーし捨てるぞ、捨てるっす戦闘機、でも、どれ捨てよう、これは取っておこうか、あ、これも使うかなあ、取っておくか、どうしよう、とりあえず取っておくか、これも……保留、で、こっちは……うーんと保留、じゃあ、これは……保留だ……って保留ばっかりかよ! 以上、物持ちのいい人の悪循環構造であります。


 これはワタシが蟹座ゆえの巣作り体質だからなのか? 掃除と称して本を出してきては、また元に戻している様はまるで動物がエサを地面に穴掘って埋めてるがごとし。そういえば以前、この日記にも、ワタシは穴が出てくる映画が好き、という話を書いた気が……って思って探したら、ココにも書いてましたが、J-WAVEのWEBにも書いてました。軽い健忘症かもしれません。なので、今日はそっちから駄文蔵出し。文中「43歳」となってますから4年前かな。

渡辺祐駄文蔵出し「ねずみ穴はやったんべえな」】


「穴があったら入りたい!」


 ワタクシ、渡辺祐43歳、実は「穴好き」なのであります。今、貴君が想像した「穴」も嫌いとは言い難いわけですが、今回はその「穴」ではなく、地面に掘るあの「穴」です。穴、ホール、トンネル、ああ、たまらない……と、このままでは人格を疑われそうなので(もう疑われているかもしれませんが)ちょっとご説明させていただきましょう。


 ある日のこと、レンタルで借りた古い映画を見ていたわけでございます。それは1960年製作のフランス映画。舞台は監獄。同じ房に収監された5人の犯罪者たちが毎夜「穴」を掘り続け脱獄を企てる、果たしてその結末やいかに……というストーリーなんですが、この脱獄映画が凄いのは、出てくるシーンが基本的に「監房」と「穴」しかないんですね。いいですか、牢獄と地面の中の穴のシーンだけで126分ですよ、あなた。なのに飽きない。飽きないどころかメチャメチャ面白いじゃないかあ!そうだ、そういえばこないだ『大脱走』のヴィデオ買ったんだっけなあ、あれも脱走です、まさに「穴」ですよねえ、さっそく観てみようっと。掘るねえ、チャールズ・ブロンソン。いいねえ、ジェームス・コバーン。掘って逃げて172分。それにしても『大脱走』の「穴」はどう観ても断面図ですな。


 あ、思い出した、戦争で捕虜になって穴掘って脱獄って言えばジャン・ギャバン様が出た反戦作品『大いなる幻影』があったな。ヴィデオがしゃん。すばらっしいいいいい。掘るぞ、自由への「穴」。製作が1937年で、しかも舞台が第一次大戦だから古くさいけどね。あ、そうだ、今度『ショーシャンクの空に』買おうっと。あれも「穴」ですな。いいね、モーガン・フリーマン。俺って脱獄好きなのかしらね。ん?ちょっと待てよ、そういえば脱獄じゃないけどオーソン・ウェルズ主演『第三の男』のラストの下水で逃亡する「穴」シーンも好きだしなあ、あ、『ブルース・ブラザーズ』も最後は「穴」(川?)から突入するじゃないですか、ハイデホおやじの待つ劇場に。もしかして、これはひょっとして、俺は、俺って男は「穴好き」なんじゃないのかあああああああああ!


 思い起こせば、ワタシったら小説でも「穴モノ」好きじゃないの。元ベトナム兵でベトコンの「穴」に突入する通称トンネルネズミだった過去を持つ刑事がその壮絶な記憶のトラウマと戦いながら地下金庫と下水で犯人を追いつめる、マイケル・コナリーの名作『ナイトホークス』もたまらん。前にもここで紹介したロス・トーマス(大好き!)の『冷戦交換ゲーム』も逃亡するスパイのベルリンの壁越えは「穴」ですよ。トム・クランシーで好きなのは『レッド・オクトーバーを追え』だしね。潜水艦って、あれも一種の「穴」でしょ。狭いよ、潜水艦。乗ったことないけど。


 そうなのであります。かくしてワタクシは決して意図したわけではなく、トンネルや下水や地下室といった「穴アイテム」が描かれている映画や小説がヒジョーに好きなのであります。これはいったいどういうことなのか。胎内回帰かしらん。いや、全体に逃亡が絡んでいるあたりから考えると現実逃避願望かも。抑圧と解放。束縛と自由。緊縛と猿轡。穴掘りと渡辺祐。そういえば小さい頃、よく押し入れに入ってたよなあ……。誰か分析してください!


 ちなみに最初に書いた「穴掘りだけで126分」の傑作脱獄映画は、ジャック・ベッケル監督のその名も『穴』です。なんとこの度、めでたくDVD(穴〈デジタルニューマスター版〉 [DVD])が発売されました!J-WAVEをお聴きの全「穴好きリスナー」にオススメです!ワタシはもちろん買いました!


(初出:2003年5月@J-WAVE e-STATION TASKBAR)


マルコヴィッチの穴 DTSコレクターズエディション [DVD] ←忘れてました。