記憶の底に刺さる日

代替文


 記憶に残る日はある。記憶の底にこびりつくような日もある。いい意味でもそうでない意味でも。残したい。残したくない。忘れたい忘れたくない。今日はいい話をした日です。そして泣きました。誰かが弱っていて、それを知る。愛はあるのでなんとかしますが、不安もあるのでなんともならない。けっこう切実なのである。センチメンタルおやじ道。反省しきり。以上、独り言。


 財布がね、ダメなのである。壊れてきた。擦り切れた。物持ちがいいワタシの真骨頂である。擦り切れてるから、使い込んでるから好き、という志向性もやや働いている。木版活字蒐集はそこんとこに関係していそうだ。「カミロボ」作者の安居智博さんも作った紙のロボを戦わせ、擦り切らせている。それは「ガンダムを見て“戦ったロボットが汚れる”のがかっこよかった」ことから引きずっている感覚だそうだ。確かにオレの頃は、28号もアトムもウルトラマンもあんまり汚れなかった。なるへそ。ガンダム世代から学んだことである。
 壊れてきたので少しラクにしてやろうと思って財布の中身を整理してあげたら、いらないポイントカードなんかに混ざって、テレホンカードが出てきた。うひゃあ、持ってたのか、オレったら。もう何年も埋もれていましたよ、財布の中で。少し度数が残ってる。そりゃそうだね。じゃあ、使っちゃいましょう、と思って電話ブースに行ってみて気づいたんですけど、オレ、電話帳持ってないじゃん。電話番号は全部ケータイの中じゃん。記憶しているのなんて辛うじて事務所ぐらいだものなあ。ってことで、携帯を出してですね、そのディスプレイを見ながら電話しました。いいですか、電話を見ながら別の電話をかける男。どうなっちゃってんだよ(笑)。岡村靖幸さんは元気なんでしょうか。


 記憶力が悪い。つーか、衰えに衰えた。電話番号どころかもっと大事な何かがマッハで遠のいている。ワタシは編集者としていろいろな文筆家に接してきましたが、秀でた文筆業者ほど記憶力がいいのです(断言)。ボキャブラリーが豊富、ということもありますが、それ以上に「アタマの中で何かと何かが瞬時に繋がる」という才なのであります。繋がるは「むらがる」じゃありませんよ〜(J-WAVEPODCAST聴いてる人だけわかるネタで御免)。エピソードの、語りたいことの引き出しがいっぱいあるということですね。物書きって、そういう仕事であります、たぶん。
 ワタシの「VOW」時代を一緒に過ごした町山智浩氏もそういう記憶力野郎であります(たぶん)。さっきblog見たら1千万ヒットを超えていた。10,000,000ですよ。すげえな、町山。相変わらずバカなアメリカ映画のことはここが一番早い(たぶん)。


ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記】
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/


 で、ワタシのような記憶薄弱な者はと言えば、ただ不安なのです。だから「大事なことは常に記録して、でもって自分で常になぞっていく」しかないのですよ。反復上等。反復横飛び。反すう大切。牛ですよ、ウシ。も〜。そうしないと、得意なことすらもうできない。優しい言葉さえ言えない。
 来年の手帳買おうっと。買わないと「来年の自分」が記憶できないじゃないか。blogっていうのもそんな擦り切れたボクの「危機管理」なのかもしれまへん。いいことはなるべく書こう。愚痴は言うまい(言ってるじゃん!)。ただね、忘れたい記憶も残してるってとこもblog。そこんとこが誰かと繋がってるようで、でも、ロンリー。くう、泣けるね、我ながら。
 思えば、擦り切れた財布の中に忘れられたテレホンカード、擦り切れた脳内にも貯まってる。


【BGM】SMOKEY ROBINSON「TIMELESS LOVE」2006
Timeless Love
熟成したアーティストがジャズ・アルバム出したり、セルフ・カヴァーに走ったりするのも、
なにかしら「反復・反芻」ということに関係ありゃしませんかね?
生涯フェイヴァリット・アーティスト、スモーキー・ロビンソンさん、
ジャズのスタンダード歌いまくり。相変わらず小声ヴォーカル。
得意なこと、してる。たまりません。