ジャズ煙草雑感

代替文


 煙草を切らして雨の中買いに行く道すがらふと思ったのだが、そういやあ最近マッチで煙草に火をつけてない。いや、最近どころか何年もだな。最後にマッチで煙草に火をつけたのはいつだろう。大学の頃まではマッチだった。宝島に入った頃もそうだった気がする。25年前の話である。ジャズ喫茶のマッチが多かった。居酒屋のもあったね。高田馬場[清龍]で500円ぐらいで呑んでいた時代だ。いや、マジに。百円ライターはすでに発明されていたけれど嫌いだった。なんだろうあの安っぽさは。BICクリケットやIMCOを買うようになったのは、もうちょっと後になってからのような気がする。新宿紀伊國屋地下[加賀屋]、渋谷地下街[ありいずみ]に行ってじっと見てた。ZIPPOは高かった。その程度の給料だったのだからしかたがない。給料が安っぽかったのを棚に上げて、自分は安っぽくないと思いこみたかった、そんな頃である。家賃2万円の風呂のない部屋に住んでいてもボタンダウンシャツだけは自分でアイロンをかけるような、そういう頃である。


 吸っていたのは最初はセブンスター。藤沢のジャズ喫茶[ブルートレイン]に溜まっていた高校時代から(ん?)。それからロングピース、ロングホープ、ウィンストンあたりに背伸びしてゴホゴホいって、マイルドセブンに逃避して、30代ぐらいからライト、1ミリにシフトチェンジ。大人の嗜みにオヤジの慎み。


 百円ライターが嫌いなのと同じようにビニール傘が嫌いだ。でも使っている。生まれた時にはなかったのに今あるもの、の中で嫌いな2大アイテムかもしれない。でも使っている。いい傘が欲しいが、どうせ無くすと思ってる。この辺にも慎み深さが漂う。まあそれは言い訳で、結局は自分に甘いだけなんだけど。
 渋谷の街はほとんどがビニール傘である。ビニール傘祭り絶賛開催中。先日、雨の日にけやき坂スタジオから放送中、見るともなく見ていたら六本木ヒルズを歩く女性はほぼ全員がちゃんとした傘をお持ちであった。金の話もあるっちゃあるが、そこのところでヒトの矜持の向かう先を垣間見る。オレにはビニールじゃない傘がない。行かなくちゃキミに会いにいかなくちゃ雨に濡れ。濡れるのはイヤなのでビニール傘をコンビニで買ってしまうのである。日に2本だって買ってしまうのである。とほほと書いてオレと読む。


 そんなことを考えていたら煙草を買ったついでに散歩の達人MOOK『トーキョー喫茶時間 (散歩の達人テーマ版MOOK)』を買っていた。老舗からイマドキまで108軒の喫茶店が載っている。ジャズ喫茶のページに四谷[いーぐる]が載っていた。正しい選択だ。っていうか、もう少ないのかもなあ、適切な店、ここ以外に。早稲田大学の学生なのに上智大学の学食でハンバーガーを焼くバイトをしていた頃の想い出の店である。まぶしかったね、上智の学生。今度行きたいね、いーぐる。


[ジャズ喫茶好きにオススメのHP]
http://jazzsoda.com/
[四谷いーぐる]
http://www.02.246.ne.jp/~unamas/eagle.html


【BGM】SONNY ROLLINS『SAXPHONE COLOSSUS』1956
サキソフォン・コロッサス
閑散とした事務所で一人きりで仕事をするというようなロンリーな雨の日曜日には
適度に明るく適度に思慮深い風合いのジャズなどがよろしいようで。
たしか高校時代の彼女も好きだった気がする。記憶が遠い。