霜月矜持考察

代替文


 電車の中でね、見るともなく向かい側の席を見た時のことである。おじさん(オレよりは)が文庫本を読んでいる。なんか違和感がある。どうもね、その文庫本カヴァーが派手なのである。なんだろうね、と近乱老と三拍子揃ってきた我がメガネをこらして見てみたら、カヴァーがお手製なのである。しかもさ、それがさ、ピザ屋さんのチラシなんだよ。オウチのポストに入ってくる、あのデリバリー・ピザの、チラシ! 文庫本の表1から背を通って表4側までピザ祭り。あははは。絢爛豪華なピザ色とりどり。文庫からチーズ匂い立つ(笑)。ピザ屋の回し者か? 我がメガネを疑いました、ワタシ。
 以前、J-WAVEのTASK BAR Podcast版でも発言したことがありますが、ヒトは「読んでいる本」を隠す。女子に至ってはヘソとかハンケツとかブラジャーとかヘタすりゃパンツとかは思いっきり見せているにもかかわらず、である。ヒトは何を見せて何を隠すのか。お尻は見せても本は見せない。なぜなら本はすなわち「アタマの中」だからだと思う。スカートの中とアタマの中だとアタマの方が恥ずかしいのである。これが本当の「アタマ隠して尻隠さず」。うま〜い。植草教授に座布団一枚。こらこら(笑)。


 プライドってありますよね。ワタシは某宝島社を26歳にしてクビという円満退職のようなものになった時に、直属の編集長から「タスク、プライド高いからなあ……」ってボヤかれたことあり。そうだったのか、オレ、20代の若造なのに。ま、それはよろしい。プライドの話である。文庫本のカヴァーっていうのも、ちょっとしたプライド(の裏返し)の問題のような気がする。誇りを持って「見せる」ことがなぜできないのか。そこんとこにラテン系には決してなれない自分(たち)を感じたりする。汚れるからというのは理由になりません(断言)。プライドがあって、そのプライドがいい意味でも悪い意味でも邪魔をしている。プライドがオノレにカヴァーをかけている。伝えればいいのに、ココロに蓋してねえか。なんだろう、そこんところ。
 とまあ、そんなに悩んでもいない(流石B型)。でもね、ちょっとここのところプライドについて考えました。雪待月の入り口で。長くなるので端折りますが、時としてプライドは「共感」の邪魔をするのではないか、と思う。共同作業でありたいと願う気持ちと、「オレの誇り」である、という独占欲の間で揺れるまなざし。仕事然り、男性関係然り、女性関係も然り。
 なので、なるべく嬉しいことは「包み隠さず」。共同作業であればなおさら。なにせオトナになると寸止め多くて(笑)。よし、声に出していこ〜!←ここかなり独り言だね。


 実は映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』もね、そんな「プライドと共感」の話として鑑賞しました。キャッツメンバーのそれぞれのプライドの美しさ、そして響き合うことの美しさ。あえて堅苦しくいえば「不在に対するアイデンティティの在り方」のストーリー。どうプライドを持って不在と対峙するか、ですな、御同輩。あ、ディテールは相変わらず思いっきりバカバカしかったす(笑)。でも泣けたっす。朝だよぉ〜。


木更津キャッツアイ
http://www.tbs.co.jp/catseye/


【BGM】KENNY LATTIMORE & CHANTE MOORE『UNCOVERED / COVERED』2006
アンカヴァード/カヴァード
前作に続くソウル界きっての美男美女夫婦デュオ(2枚組)です。
シャーデー「NO ORDINARY LOVE」なんかのカヴァーからゴスペルまで
イマドキ感覚入れつつも、クラシック風味、スムース&メロウな仕上がりは秋に最適。
タイトルに「ココロはUNCOVERED?」という意味も含まれておるそうな。はぎてえ。