今日という日は何の始まりか(長いよ)

 スライ・ストーンさんが30年振りにアルバムをお出しになるのである。日本盤も出るのである。

I'm Back! Family & Friends

I'm Back! Family & Friends

アイム・バック!

アイム・バック!

【詳細はいつも他力本願>SOUL TRAIN JAPANさんのサイト】
http://soultrain.jpn.com/

 30年ぶりってのは、さすがに凄いね、どうも。そこでワタシも「30年振りの何か」をしてみようかしらんと思ってみたのである。30年前の1981年に何をしていたかを思い出してみたら、なーんと、ワタシはその年の夏の終わりに月刊宝島編集部にバイトとして潜り込んでいたのでした。大学4年目の時である(4年生ではない)。確か夏休みに合宿免許を取りに行ってそしたら地元との不良に睨まれて雑木林に連れて行かれて囲まれたりして杭で殴られそうになってパトカーが来て警察沙汰になったりしつつ卒検落ちて延泊してやっと免許取ってしかもその地元の不良に教習所長の部屋で土下座で謝られたりしたあの夏の終わりにワタシはバイトを開始したのである。

 ちなみに最初に入ってやった仕事として印象深いページは「クラッシュのライヴ・レポート」「VOW」「糸井重里ロング・インタビュー」でした。でも、もうほとんどディテールは覚えてません(断言)。

 つまりですね、ワタシは今年で編集者歴が30年なのであります。うひょう。原稿用紙に初めてくだらんことを書いたり、書いてあることに初めて赤入れしたりしてから30年=360ヵ月=約10,950日。書いた「(笑)」が五万回ときたもんだ(笑)。←一回増えた。

 人には、必ずモノゴトを「最初にした日」と「最後にした日」があるはずである。はず、じゃなくて、ある。「最初にした日」については、童貞喪失(言い回しが古いね、どうも)といったかなりちゃんと記憶できているものから、「最初に牡蠣を食べた日」とか「最初にホッピーを呑んだ日」とか「最初に自分でパンツを買った日」とか「最初に育毛剤を買った日」とか、もうそれがいつのことだかわからない種類のものまである。

 だが、問題は後者ザ・レイターではないか。「最後の一回」。この歳になってくると、それがモンダイだということに気づかされるのである。例えば、ワタシはタヒチにもバハマにも行ったことがあるけれど、この先にもう一回行くかどうかはかなり怪しい。嫌いなわけじゃないですよ、可能性として。そうなると、ワタシにとっては、あの日が「タヒチに行った最後の日」になるんだなあ、ということである。ヘタしたら「あの日」が「京都に行った最後の日」になるかもしれないのぢゃないか。

 初めてのチュウがあれば、最後のチュウもある。「酎」じゃないぞ。

 先日、沖縄料理を食べながらサンピン茶割りを呑み(あ、これは「酎」)、その席で「海老と蟹ならどっちが好き」という話になった。ほとんどの出席者が、なんとまあ、海老だって言うんですな、これが。「なんとまあ」と書いちゃってるぐらいのなので、ワタシは蟹です。というより「海老 vs 蟹」というこの設問自体が間違っているとさえ言いたい。それぐらい海老に興味がない。対象外なのである。いや、喰えば普通に美味いと思いますよ。ましてや白海老とかね、桜海老とか(笑)。寿司屋でも海老食べないねえ。鮪もあんまり食わないが。

 何が言いたいかと言えば、もしかしてあの日が「最後に沖縄料理を食べた日」かもしれないし、「最後に海老と蟹のどっちが好き?という話で憤った日」かもしれないということですよ、御同輩。

 まあ、もう一回ぐらいは「海老 vs 蟹」の話はしてもいい。しなくてもいい(笑)。

 誤解されては困るんですが、「だから今日一日を全力で生きよう」とか言ってるわけではありません。そんな当たり前のことを言うような恥知らずではございません(笑)。適当に自分にワガママにやってるぐらいで丁度いい。「子供たちに未来を」という類の話ではなくね。それは別問題。

 カナシミの話なのである。終わっていく、ましてやそれが「最後の一回」であるかもしれないことの連続を日々噛みしめていることの。「最後かもしれないし、そうでもないかも?」といった曖昧さを抱えたままで大人を過ごして行くことの。「頭髪の最後の一本まであと何本か」とか、考えてもわからないことを考えたりする、どーでもよさと悔いのある半生に気づくときの。

 今日もまたワタシは「最後の一回」になる何かをしでかしている。それがわからないから面白い。きっと後で泣きながら笑うのでしょう。

 そして、この歳で「最初の一回」であることも起きているはずだ。まあ、「最初で最後」かもしれないけれど(笑)、それはそれで噛みしめないと。さて、何が「最初の一回」だったかな。30年前の編集アルバイトの話ではないけれど、もう忘れてることも多いので、何でも「最初の一回」みたいな気もしてくるな。

 ある日、すべてのことが「最後の一回」になってしまった、その人(たち)のことを思ったりしながら筆を置く。

 なんで、こんな長いの書いてるんだ(笑)。←また一回増えた。