メイシオとコバーン

マイ・ファースト・ネイム・イズ・メイシオ [DVD]電撃フリント/アタック作戦 [DVD]


 おっと、もうこんな時間だす。今日は朝から大渋滞、弊社会議に遅刻。すんません。会議後にカレー食べて、「Shinbiyo」誌連載のネタ打合せ。さらにLeyonaさんのWEBマガジン「Sty-Lyn」打合せ。これから明日のJ-WAVE e-STATION GOLD TASKBARの選曲とWEB版コラム執筆。うひょひょひょひょ。


 お仕事と言えば、フリーペーパーの編集をさせていただいている[Billboard Live]。今月いよいよオープンです(まず東京)。以下は、ソウル部オンリーのスケジュールご紹介。
(その他のアーティスト&大阪・福岡のスケジュールは公式WEBサイトご確認ください)

Billboard Live TOKYO/SOULの部】

09月05日(水) Sa-Ra(Creative Partnaers)
09月13日(木)-9月16日(日) Maceo Parker(with Pee Wee Ellis & Fred Wesley)
09月23日(日) Rachelle Ferrell
09月27日(木)-9月29日(土) Teddy Riley
10月15日(月)-10月20日(土) Babyface
Grown & Sexy
10月21日(日)-10月22日(月) Allen Toussaint
10月23日(火)-10月24日(水) Roy Ayers with Bilal
10月29日(月)-10月30日(火) Keith Sweat
11月05日(月)-11月07日(水) Amerie
11月08日(木)-11月09日(金) Carl Thomas


いいねえ。どれも観たいざんす。準スタッフが言うのもナンですが(笑)。
というわけで、本日は週末のお供用に、9月に登場するメイシオ・パーカーさんについて書かせていただいた駄文蔵出し。2002年に国際フォーラムでのプリンスのライヴを観た直後の原稿でございます。殿下の来日メンバーにメイシオさん。そこのところがわからないと全然意味がわからないのでございます。

渡辺祐駄文蔵出し「ねずみ穴はやったんべえな」】


 いやあ、凄かったですなぁ、元プリならぬ元記号ことプリンスのライヴ。BMR誌の読者の皆様には、お出かけになった方も多いでしょうから、詳細は省きますが、これぞ「オレ様ライヴ」の決定版でしたね。ベッドでセックスポースとかね、そういう変な演出一切ナシ。演奏するする。純演奏。エッセンス生搾り。グルーヴとクオリティだけがそこにある。そりゃもうファンは狂喜乱舞。で、イッパン的には「もうついていけまへん」というところまで来ちゃいました。言ってみればですね、「音楽のことがわからんバカな“大衆”なんか相手にしてないもんね」という宣言と言っても過言ではないかもしれません。レコード会社嫌いの殿下としては、「これからは、WEBとかでファンだけ相手にしてくもんね。だからボクちんの音楽が好きじゃない人は来なくていいです!」ということでしょう、たぶん。「ボクだけを見ていて〜」みたいな。それが証拠にファンクラブ会員がエラく優遇されてましたしなあ。リーハーサルが鑑賞できたりしてね。いいなあ、リハーサル。で、このオレ様ライヴ状態、ワガママっぷりが何かに似てるな〜、と思ったら、それはお坊ちゃまくんでした(笑)。言ってみれば、ファンク界のお坊ちゃまくん。いいなケツ。これからはプリンス様のことを「ファンクっちゃまくん」と呼ぶことにします。ぜんぜん広まらないとは思いますが。


 その殿下のステージでひときわ輝くスキンヘッドといえば、メイシオ・パーカー様。キャッチフレーズは「2% Jazz, 98% Funky Stuff.」ですよ、かっこええわあ。しかも、今回も良かった。あいかわらずの、あのプリっとしたサックスの音色。弾力のある濡れたブロウ。まるで極上の煮こごりのような(合ってるのか、その例えは)。しかもプリンスにメイシオですからねえ。ワタシのようなオールド・スクール・オヤジにとっては夢の共演。極論としては、今回は「メイシオを連れてくるぐらい気合いの入ったプリンス」を観る、ということだったりしましたから。至極満足。お腹いっぱい。「GO!メイシオ!」のかけ声の入れ方とか、まんまJBですから。しかもJB'Sナンバーも披露(浜松ではツェッペリンも演ったそうな)。好きねえ、殿下も。さすが同世代。ま、殿下に負けず、このワタシがどれぐらいメイシオのことが好きかということを主張しておきますと、例えば初対面の人を紹介された時に、相手が名刺出しますよね。相手の方「あ、ワタクシ、こういう者でございます」渡辺「あ、ワタクシも、今、名刺を(パーカー)、すぐに名刺を(パーカー)」……と、必ずココロの中で囁いているぐらい、と思っていただければいいでしょう。


 さて。今回、原稿を書くにあたり、いちおういろいろ資料を見てみたんですが、あらためてメイシオって凄いなと思ったのは、これだけファンク/R&Bファンに親しまれていながら、自分名義のアルバム/シングルは意外と地道なヒットしかしてないわけですよ。そりゃまあ、基本はインストのジャズ/ファンクですからして、そうそう大ヒットはしないわけですが、そこがまたスバラシイ!(ジョン・カビラ風)じゃないですか。ファンク界の名脇役として活躍すること約40年。1964年にはジェイムス・ブラウンの「アウト・オブ・サイト」に参加。ちなみにワタシ、5歳です。この間に脇を固めてきた主役の皆さんときたら、ジェイムス・ブラウンはもちりん、ジョージ・クリントンにブーツイ・コリンズ、でもってプリンスですから。その人生や素晴らしき哉、じゃあないですか。


 こうして名刺を、いや、メイシオの名脇役ぶりに想いをはせていて思い出したんですが、先日、ジェイムス・コバーンさんがお亡くなりになりましたね。あのお方も、脇役としての光り方がハンパじゃありません。主役のヒーローっぷりに対して、ちょっとニヒルな(死語か?)視線を投げかけつつも、その主役がひとたびピーンチ!となると、スッと現れて、しゅっとナイフ投げてピンチを救いながら「フフッ」と笑う、みたいな。そういうイメージ。たまりませんなあ、そこのポジショニング。ま、「荒野の7人」なんですけどね。あと「大脱走」の時もね、けっこう機転が効いたりして、バイクで突っ走って一番かっこいいマックイーンは捕まっちまうんですが、コバーンだけは地道に助かるんだ、自転車に乗って。うーむ、てえことは、ユル・ブリンナーがJBで、マックイーンがプリンスあたりかなぁ。話がよくわからんですか?
 メイシオとコバーン。主役につかず離れず、大事なところで「GO!」と呼ばれるやスッと後方から登場、何気なくサックスとナイフでテキを倒したかと思うと、次のシーンでは何事もなかったかのように後方に下がる、あの間合い。主役のかなりな無理難題にニヒルな(だから死語だろ)ポジショニングでいながらも、結局はお役に立つ職人芸。
 ああ、そういう人にワタシはなりたひ。


 余談ですが、プリンスと同時期にポール“今回は無事入国”マッカートニーさんも来日してましたが、ウィングスのジャケットにもジェームス・コバーンがフィーチャアされてましたっけ。合掌。


(初出:2002年12月@BLACK MUSIC REVIEW・20世紀FUNKY世界遺産