久しぶりに駄文蔵出し!


 あ〜ん、お寿司食いたい。昨日&今日とハンバーグや五目焼きそば食べてたからかしらん。コハダLOVE。そんなワタシの駄文蔵出し。寿司ネタ。2005年12月に書きました。お暇な方だけ読んで、時間の無駄を後悔してください(笑)。

渡辺祐駄文蔵出し「ねずみ穴 はやったんべえな」】


「寿司と分度器。」


 お寿司屋さんの話であります。お寿司屋さん、小料理屋さん、居酒屋さんなど、お店の方とお客が正面向いて対峙する、あの「カウンター」というのは、世界的に見ても非常に珍しい食空間であります。バーなら世界中にある。がしかし、生魚をはさんで職人と客が面と向かっている、これはよく考えるとなかなかない。しかも、ディナーを食するのですよ。特にお寿司屋さんは、そこでかなりの高級食材がやりとりされているのです。行ったことのないような超有名店をテーマにしたグルメ・エッセイなどを読んでおりますと、席の着き方から頼み方、出され方に食べ方に勘定の払い方まで、それぞれお作法があるかのごとく書いてあったりいたしますな。ある種、神聖な場である、というような。ま、行ったことはないので、実際どうなのかは知らないわけですが。屋台という世界一カジュアルなスタイルから発祥して、世界一格式のある空間にまで成り上がった、あの「カウンター」。スペインのバルにも近いものがありますが、だいたい立ち呑みだったりして、やっぱりカジュアルです。


 世の常として、格式と高級はとっても仲良しなので、畢竟、お値段が高くなります。お値段が高いということは、当然オトナの人向けになる。こうしたオトナのお寿司屋さんでは、そこにオトナの男女関係が介在してきます。デートで「お寿司屋さんに行く」という選択肢は、一般的にオトナの考えです。さらにロケーションが、銀座とか六本木、赤坂あたりになりますと、「同伴」という「オトナの考えMAX」なカップルもよくお見かけいたします。そこに、金と艶事と鮑あり。


 さて、そうしたオトナの考えに基づいたオトナのカップルをオトナのお寿司屋さんで観察しておりまして、ひとつ気になることがございます。そのカップルの女性の方、特に「オトナの考えMAX」だと思われる、かなりいい匂いのする女性の方に多い傾向として、カウンターに正対して座らない。ナナメになってる。つまり、彼氏の方にカラダがやや向いているのであります。職人さんが朝早くから仕入れに奔走し、仕込みに汗を流し、一瞬のスキも見せずに握る、そのお寿司に対して、きっちり「向かう姿勢」でなければならないはずです。そうグルメ・エッセイに書いてありました。


 がしかし。カップル客、特にオトナの考え度数が高い方ほど、まっすぐ座らない。図で表しますと、本来「□■ 」こういう風に並んでいて欲しいところが、「□◆」という具合になっておられる。つまりカウンターに向かうのではなく、男性側、つまりフェロモンの方に向いちゃうわけであります。べたべたしてる、とでも申しましょうか。


 このべったりした感じの座り方、初期的段階では、だいたい30度から45度あたりを基本といたします(本来の座り方を0度とした場合)。それが、お酒も進み、美味しい酒肴も進んできて、「さあ、そろそろ握ってもらおうか」ぐらいの時点で60度を達成。握りがつけ台に並び始める頃には、へたすりゃ90度、カウンターに対して直角に、彼の方だけを見て「いやーん、このお寿司、とってもおいすぃわあ」とのたまわったりしてらっしゃいます。「美味しい」ということを「作り手」にではなく「スポンサー」に伝える。そんなオトナのテクニックなのでありましょう。どうやらこの傾向は、個室流行りの和食ダイニングのスタイルが影響していると思われますが、紙数も尽きましたので、詳しくはまたの機会に。


 なお、以上の研究は、実際にワタクシが持参した分度器で計測した結果であります。皆さんも、次回お寿司屋さんにお出かけの際は、分度器をお持ちになることをお薦めいたします。


(初出:2005年12月@J-WAVE e-STATION TASKBAR)